変大佐の備忘録

「こころのなか」

ウサギは寂しいと死んじゃうんだってさ

 ぼくの敬愛する田中ロミオ氏が書いた「人類は衰退しました」の2巻に、「誰にも認知されなかった人間」がどうなるのか、というモデルの一つが登場している。彼は生まれてから全く誰にも観測されなかったがために、「わたし」ちゃんが彼を認知する(というよりは、「こういう人だろう」と決めつける)まで存在そのものがあやふやだった。
 もちろん後の展開も含めてこの話にはこの物語全体としての意味合いがちゃんと存在するから、ここからはぼくの拡大解釈ということになるけれど。
 彼の出自が示すのは、自認――自分が誰で、どんな人間なのかということ――は誰しも外部から押し付けられるのが最初なんだ、ということなのかもしれない。もっと踏み込めば、人は他人からの観測によってのみ人たり得る……とまで言ってしまえる。この辺りはクロスチャンネルの太一とも繋げられそうだけど、話がややこしくなるので保留。
 まあ、ここまで引っ張ってきて何が言いたいかというと、「自分を認めるためには、まず誰かに認めてもらう必要がある」、ということ、転じて、「誰かに自分を肯定してもらわないと、自分を肯定することはできない」ということは、ぼくたちの世界でも通用する理屈なんじゃないだろうか。言ってみれば単純なことなのかもしれない。
 たくさん誰かを褒めてあげよう。その人が自分を褒めてあげられるように。