変大佐の備忘録

「こころのなか」

【Rewrite】こたことは何故ぼくらの胸を詰まらせるのかPart3【Hf~まとめ】

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彼の心境如何ばかりか。これまで記述してこなかったが、彼もまたこたことに欠かせない要素である。
※当記事は
hentaisa.hatenablog.com
および
hentaisa.hatenablog.com
の続きです。こちらをお読みになってからお越しください。また、今回からはRewrite Harvest festa! のネタバレも含みます。
 今回はRewrite上級者向け。なんというか、萌え語りというよりは考察に近いPartになってしまいました。我こそはこたこと沼にハマりし者! と豪語する方にこそ読んでほしいです。別に豪語してなくてもいいです。そしてあなた方が、イラストや、あるいは小説で、こたことを生産するその一助になれば、筆者にとってこれ以上の喜びはありません。

こたこと、その最後のピース

 筆者がRewriteをプレイしたのは発売からおよそ5年後の2016年1月だったために、発売直後の盛り上がりというものを体感していたわけではないが、当時の記事群や公式人気投票などを見るに、やはり個別ルートのインパクト(あとおっぱい)から朱音さん人気が非常に高かったようだ。反面、小鳥は発売前からメインビジュアルに据えられていたのに結局脇役ヒロイン止まりじゃないか、という評価が多かったようだ。それもそのはず、Rewrite本編の小鳥ルートは途中のまま終わっていて、本編すべてとHfの小鳥編までを含めたところが本当の小鳥ルートなのだ。物足りなさを感じるのも必然と言える。なぜ、途中で切らざるを得なかったのか。Rewrite本編クリアプレイヤー諸氏なら、そして筆者の書いた二つの過去記事を含めてここまで読み進めた方なら、もう察しがついているかもしれない。そう。二人が本当に「めでたしめでたし」を迎えるためには、あの時からもう一度やり直さねばならないのだ。凍り付いてしまった時計の針を、もう一度動かしてやらねば、二人の間にそびえる壁を取り去ることはできない。「鍵」への決別は済ませた。だが、まだ我々は見届けていないじゃないか。魔物と魔物使いではなく、人間と人間としての彼らの決着を
 ――なんて、カッコつけてみたはいいけれど。実際のところHfの小鳥編はけっこうな割合でただイチャイチャしてるだけである。いや、Hf自体わりとイチャイチャするためだけに書き上げられたシナリオが多いのだけど……
 とにかく、そういったイチャイチャに対して我々こたこと推しは「ありがとう……田中ロミオ先生ありがとう……」五体投地するほかないため、ここでは詳しく述べない。たまには語彙力を捨てよう。ハァ〜〜尊い

追いかけっこ

 小鳥はあの小鳥ルートを乗り越えてなお、瑚太朗に正面から向き合うことに未だ躊躇している。それは、やはりまた失ってしまうことへの恐怖からなのだろうか? それとも、瑚太朗に対する罪悪感と、自分に対する恐怖を拭い去れないでいるのだろうか? ……いや、実はもっともっと単純なことなのかもしれない。なにしろ、彼女の恋はここからが始まりなのだから
 追う瑚太朗と、逃げる小鳥。何も持っていないからこそひたすらに追い求める瑚太朗と、もう何も喪いたくないがために何も得ようとしない小鳥。あの追いかけっこは、ともすればずっと続けてきた彼らの道筋なのかもしれない。最も近くにあるのに届かない幸せを追いかけ続ける瑚太朗の姿は、かの有名な「青い鳥」に登場するチルチル・ミチルのようで。その結末は、小鳥が振り向いてたった一歩を踏み出すだけで、拍子抜けするくらいあっさりと解決してしまう。もしかしたら――彼らはお互いに青い鳥であり、お互いにチルチル・ミチルだったのかもしれない。いちばん近くて、いちばん遠い。手垢のついたコピーだが、これ以上うまく言い表せられる言葉を、私は知らない。ああ、しんどい……
 さて、これにて過去の清算は済んだ。かつての仲間も一時休戦してまで祝福してくれて、途中でなんか塵に帰ったはずの篝が再出現したりしてたけど、よかったよかった。彼らの未来は明るい……ん? 篝が再出現? あっ……
 Part2で記述したが、共通ルート開始時点で既にポイント・オブ・ノーリターンはとっくに過ぎている。つまり――具体的に彼らの幸せが途中で寸断されるかどうかまではわからないが――星の悲鳴を押しつぶしたとしても、近いうち必ず終わりが来るのだ。彼らの幸せも、有象無象の枝の一つに過ぎない。この幸せの絶頂を迎えることができる小鳥編の枝世界を可能性の一つに過ぎないという残酷さと取るか、一つの可能性があるという救いと取るか。このない交ぜになった二律背反が、今日も筆者の心を締め付ける。

孤立と孤高と孤独

 こたこと、というカップリング談義とは外れるが、ここでこたことと吉野の切っても切れない関係について記述しておこう。この三人の「孤」としての在り方は、似ているようで微妙にズレている。瑚太朗の孤は他人を欲しているのにどうしたって他人とうまくやれない「孤独」であり、小鳥は本来独力で生きられるが故に他人を欲するより保身が優先されてしまう「孤立」であり、吉野は普通にやっていれば他人とうまくやっていけるのに信念として「孤」を選ぶ「孤高」である。 だからこそ、と言うべきか――この三人は、三者三様にそれぞれへの尊敬を抱いている。
 瑚太朗から見れば、小鳥は劣等感を抱かせるほどに孤にして個を確立しているし、吉野はしっかりと己の意思で己が道を行っている。
 小鳥から見れば、瑚太朗は自分より必死にもがいて新しい地へ歩みを進めようとしているし、瑚太朗から見るのと同じく吉野も眩しく見えるはずである。
 吉野から見れば(この視点のみ記述が少ないため憶測が交じるが)、瑚太朗と小鳥のうちに眠るシビアでシリアスな行動原理を見抜いていたはずで、それらには完全な敬意を持っていた。
 三人は引き合われながらも、決して交差することがない。心の底から打ち解ける、という関係にはなりえない。それを嘆く必要はないのだ。それは尊敬の証左なのだから。
 でも、こたことの緩衝材にされるのはほんとに不憫だと思います……惚れた女と親友ライバルの照れ隠しに付き合わされるの、筆者だったらたぶん耐えられない……

繋がれた自由という名の鎖

 さて、ここからはPart1から散々引っ張ってきたゲーム開始時点より前からこたことが成立しているのに他ヒロインのルートへ分岐できる理由を記述していこう。これはズバリ言い換えると他ヒロイン攻略の裏でも小鳥が瑚太朗の命を繋いでくれるという関係が続き、攻略終了とともに小鳥と瑚太朗の関係にもひとつの決着がつくという状態を指す訳であるが、実はもうひとつ隠された意味合いが存在する。それこそが、ここまで筆者がこたこと萌え語りを長々と続けてきて言いたかったことである。すなわち、本当に小鳥ルートは小鳥の一人芝居だったのか? 本当に瑚太朗は自分の自由意志で小鳥を求めたのか? という疑問への答えである。
 後述するが、実はこの疑問についてはPVB(公式解説本)とHf小鳥編を照らし合わせると限りなく真実に近いものが導き出せる。が、一旦筆者の妄想を聞いてほしい。たとえ公式に反証されたとしても、この妄想は書き留めておきたい。
 仮に……Part2で述べたように、共通開始前の事故以来、小鳥は瑚太朗の自由意志を完全、あるいは不完全ながらも操れる状態だったとしよう。小鳥は、きっとひどくそれを嫌悪したはずだ。その事実を奥深くに押し込んで、心を閉ざして、体面を取り繕って……
 実際、小鳥は瑚太朗に――例えば小鳥ルート終盤、両親へそうしたように――意図的な指令を一度たりとも与えなかったのだろう。だが、彼女も恐らく気づかないうちに、小鳥はたった一つ、ある指令を瑚太朗に与えているのだ。

『ねえ、瑚太朗君?』
『いろんなもの…見てね』
『あんまりね…閉じこもらないでさ…』
――RewriteOPムービー/共通ルートより

 この寝言。Part2では詳しく考察しなかったが、ほぼ間違いなく小鳥の本心から出た真の願いと見ていいだろう。小鳥は……瑚太朗に自由を与えるという指令を下したのだ。瑚太朗に、彼自身の人生を歩んでほしいと願ったのだ。
 かくして瑚太朗はその通りに駆動する。満たされない気持ちを抱えながら、運命の渦の元に、無数の分岐に飛び込んでいく。その中で、瑚太朗が小鳥に立ち返るという救いが、小鳥ルートにはあるのだ。

憧れ

 ……というのは、筆者の妄想である。本作の規定した事実は、もう少しドライで、でもそれでいて別の可能性を提起している。
 まず、資料の少ない人型魔物についての設定が、PVBの、田中ロミオ氏自身によるQ&Aコーナーに掲載されている。

Q:物語序盤で、魔物の理香子が瑚太朗に小鳥を連れ戻すよう命じた理由は?
A:理香子は人間の遺体がベースになっているため、独自の判断で行動できます。(中略)このあたりは、動物ベースの魔物がその本能を利用できるのと同じ理屈です。一定時間小鳥が戻らない場合、理香子は独自の判断で所在確認を行います。仕様です。冒頭のケースでは、森にいることはわかっていても、自力で探し出すことがあまりにも不可能そうなので、隣人(半同胞)の瑚太朗に支援を要請しています。それが母性の名残なのか、魔物の本能なのかは分かりません。
――Rewrite パーフェクトビジュアルブック

 これは理香子さんについての話であるが、瑚太朗についても、 本来の素体が持つ「仕様」が魔物化してもそのまま立ち現れる 、ということが成り立つはずだ。
 つまりは、なんてことはない単純な話だ。小鳥に対する瑚太朗の想いは、魔物になる前も、なった後も、ずっと同じだったのだ。
 では、瑚太朗はどんな想いを抱き続けていたのだろうか。Hfの追いかけっこのシーンから、それを垣間見ることができる。引用していこう。

 ずっと前から、似た者同士の境遇にあって瑚太朗の一歩先をいく小鳥に憧れていたのだろう。その想いのまま、ただ愚直に小鳥を求めただけ。小鳥ルートの真実は、案外そんな簡単なことだったのだ。

 実は、小鳥ルート以外で見られる小鳥のある種異常なまでの無私の献身と、奇妙な一致を果たすものがある。Moonの月篝である。

五度目をのぼる途中で、唐突に愛を見つけた。
小さなカケラ。
愛の概念がこんな高い位置に置かれていたことが驚きだ。
低位の感情、脳の錯覚だとばかり…
(中略)
愛はかつて上にあり、そこから一部が落ちてきたようだ。
このことは、愛がとても重要であることを意味する。
(中略)
…ああ、自己犠牲の精神か…
――Moonより

 ご存知の通り、Rewriteの世界において愛には二段階の階層が存在する。たんに生理現象としての好意、低位の愛と、真に自らのことを顧みず相手を想う高位の愛だ。Moonのラストシーン、月篝が地球のために全てを捧げてしまうのは後者である高位の愛に相当する。
 これはあくまで憶測に過ぎないが――小鳥は瑚太朗に対して高位の愛を獲得するに至ったのではないか?
 順に根拠を上げていこう。まず、小鳥はギフテットである。幼少にして大人の世界の法則に踏み込んでやりくりする賢さを発揮しているのがTerraでも確認できるだろう(マーテル集会拒否の件など)。であるならば、大人になったときにはより高次な賢さを身につけているのではないだろうか? それは、ともすれば凡人では決して到達できない領域であるのかもしれない。そう、例えばMoonで瑚太朗が知能を引き上げたときのような。
 そしてRewriteでは、知性は否応なく孤独に繋がる。幼少にして寄る辺の人間を全て失い、ただ孤独の中で瑚太朗を想い続けた賢人けんじんが、Moon編で瑚太朗が潜り込んでいく“真理”にどこまで近づけたかは分からない。しかしその素質、運命、境遇の中で辿り着く答えとして、ありえる領域ではないだろうか。あるいは、瑚太朗のように直接真理に“触れた”のではないのかもしれない。偶然、その真理に近い愛に、自力で至ったのかもしれない。だとしても、月篝と小鳥の持つ“愛”のありようには、確かな共通点が見られる。

地球には豊かな緑。
月には冷たい石くれ。
恨まなかったのか?
憎まなかったのか?
たとえ未来が滅びても、俺たちをずっととどめることができたはず…
なのに地球に返すというのか…
ばかだな…
愚直すぎるんだよ…
それを…愛というんじゃないか…
――Moonより

【声】「私、多分、瑚太朗君のこと、ずっと縛ってたの」
【声】「そのせいで…」
(中略)
【瑚太朗】「なんだって、乗り越えてみせる」
【瑚太朗】「一分でも、一秒でも静流と一緒にいられるなら」
【瑚太朗】「一緒に生きていけるなら…」
【瑚太朗】「俺はそれで、なんだって構わない」
【瑚太朗】「…最大限、静流を幸せにしてやるだけだよ……!」
【声】「…………すごいな」
【声】「…うん、わかったよ」
【声】「でも…私にできること、ここまでだから…」
【声】「…二人に、渡すよ」
【声】「どうか、出来るだけ長く…二人の運命が…続きますように…」
…さよなら。瑚太朗君。
――静流ルートより

 発売前のメインビジュアルで、小鳥があたかもメインヒロインかのように前面に押し出されていた構図。発売直後は「ヒロイン詐欺だ」だなんて言われていたようだが、本当にそうなのだろうか?
 実際のメインヒロイン(月篝)が体現した、地球あいてのためにみずからの全てを擲つ愛。小鳥が月のテクスチャ上で体現した、瑚太朗あいてのために人生みずからの全てを擲つ愛。もし、この一致がメインシナリオライター田中ロミオ氏の意図されたものであるならば――実は彼女こそが、Rewriteの深奥に秘められた“愛”を暗示する裏・裏メインヒロインだったのかもしれない。
 つまり、実質こたことはRewrite全体の縮図であると言えるのではないだろうか。いや、言いたい。どんなに荒唐無稽でも声高に主張したい。こたことはRewriteRewriteはこたこと。我らはこたことと一つであり、こたこともまた我らと一つなのだ……

完。
 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。






どうでもいいあとがき

 Twitterで長いことぼくをフォローしている方は、もしかしたら見たことのある情報の羅列に見えたかもしれません。実際、このPartはこれまで無軌道に呟いてきたこたことツイートの総集編のようなものです。ただ、このブログの一番初めの記事(ついったライフへの回顧とブログ開設のあいさつ - 変大佐の備忘録)に書いたように、それらのツイート群もやはり情報が断片的すぎて、おそらく近いうちにぼく自身の手では発掘不可能な情報になるのではないかと思っています。ここまで一つのことに徹底して思考を巡らせたことは今までありませんでしたし、今後もあるかどうかは分かりません。だから、この二年間ほどずっと頭の片隅で考え続けたことを、こうしてひとまとまりの情報(informationではなく体系的なintelligence)として記録しておかないと、きっと未来のぼくは今のぼくに申し訳が立ちません。そんな思いで、今回筆をとりました。しかし、Twitterで「今まで気づかなかったことを知れた」「Rewriteをまたプレイしたくなった」などの感想も頂き、本来の(?)こたことをもっと広める、という役割も果たせたかな? と、違った意味での満足も今はあります。
 ぼくは0から1を生み出すことが苦手です。だから、オリジナルを研究し尽くすことしかできません。このブログが、今後さらなるこたことの隆盛に繋がることを、烏滸がましいながらもすこし期待しています。